カテゴリ:北欧視察 2015( 11 )

北欧の暮らしと住まいを訪ねて-10

旅の最終日です。夕方のフライトまでの間、この日も建築探訪をしました。

午前中はミュールマキ教会(ユハ・レイヴィスカ設計)を訪れました。
ヘルシンキ中央駅から近郊列車M線で15分程、Louhela駅を降りると、すぐ目の前にその教会があります。

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中へ入ると低天井の向こうに壮大な空間が見えてきます。
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ずらされた幾重もの面が折り重なり見せる陰影のグラデーション、それと呼応するかのようにアシンメトリーに躍動するパイプオルガンのフォルム・・・思わず見とれてしまう美しさです。
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幾重もの面で構成されるデザインは、テキスタイルとしても展開して空中に浮遊します。
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浮遊する照明器具は、先日見たグッド・シェパード教会(同じくユハ・レイヴィスカ設計)と同じデザイン手法です。グッド・シェパード教会では照明器具3つがセットで配置されていましたが、このミュールマキ教会では4つがセットで配置されています。
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この空間は祭壇に向かって左右方向に空間が長く、その先には大きな開口部があり、光をふんだんに取り込む構成になっています。先日見たグッド・シェパード教会はかなり開口部が抑えられアットホームな包まれる感じの雰囲気の空間だったのに対し、このミュールマキ教会は比較的開口部が大きく抜けのある清々しい雰囲気の空間だと感じました。
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さて、いったんヘルシンキ中央駅まで戻るとちょうどお昼時です。思い返せば今回の旅ではレストランでの外食はまだほとんどありませんでした。というのも、スーパーでバケットを買い移動しながらかじるとか、アパートメントホテルで自炊して食べるとかが多かったからです。そういえば日本から持参したお米5合は全て食べきってしまいました。
そこで、これが今回フィンランドでの最後の食事と思い、市内にある1934年創業という老舗レストラン「ラヴィントラ・シーホース」へ行ってみました。
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美しく趣ある店内です。右手の壁には店名にもなっているタツノオトシゴ(シーホース)が描かれています。
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日本にはあまりないものをと思い、「トナカイのフィレ肉ステーキ」を注文しました。トナカイ肉はわりと牛肉に近い味ですが、牛肉よりもやわらかく、そしてレバーのような臭みが少しあります。そこへクランベリーのジュレを添えて食べると不思議と臭みが消え、独特のコクと香りのある味になります。一度は食べてみる価値のある料理だと思います。
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食事のあとは、アカデミア書店(アルヴァ・アアルト設計)を訪れました。重厚で品格の漂う深緑色の外壁が、歴史ある街並みに溶け込んでいます。
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内部は3層吹き抜けで上部にはトップライトが連なります。トップライトは3重サッシとなっていて、上側の2つのサッシは上へ凸になっているの対し、一番下のサッシは下向きに凸になっています。これが行灯のようにきらめき、室内に光をふりまいています。こういうシンボル的な美しさのある空間は、たとえ時代が変わって用途が変わることすらあろうとも、きっと人々に長く愛され使い続けられるのではないか、そんなことを思いました。
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吹抜けに面する2階の奥には、アアルトデザインの家具や照明器具に彩られた「カフェ・アアルト」があります。ここのカプチーノはコクと甘味があり、実にいい味でした。
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これで今回の旅は終了。

「心地よい空間とは何か?」という問いを胸にかかえながら、スウェーデンとフィンランドの暮らしと住まいを訪ね、多くを見て廻り、自分のフィルターを通して吸収し、様々なデザインの引き出しを持ち帰ることができたように思います。ここで体験した、暮らしの豊かさ、住まいの楽しさ・・・そうしたことを思い描きながら、今後の自分の建築設計をさらに展開していけたらと思っています。



新井崇文
新井アトリエ一級建築士事務所


by takatakataka03 | 2015-07-01 16:04 | 北欧視察 2015

北欧の暮らしと住まいを訪ねて-09b

スタジオ・アアルトを後にして徒歩10分程度。次はアアルト自邸を訪れました。

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自邸にはアトリエ(事務所)が併設されており、2層吹き抜けの空間となっています。高窓から光が降り注ぎます。
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アトリエの一番奥にはアアルトが定位置で座っていたという席があります。吹き抜けを望む低天井の落ち着いた空間に2面の窓から入ってくる光が廻り、実に居心地がよさそうなコーナーです。
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アトリエに面して、リビングがあります。このリビングが実に美しく、心地よい!
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ソファー・テーブル・ピアノ・暖炉・絵画といったインテリアの各要素と配置の美しさ。そしてそれらほぼ全ての要素が目線より下に配置されていることで、天井の高い空間でありながら、腰の低い落ち着いた雰囲気が醸し出されているように思いました。
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もうひとつの大きな魅力となっているのが、ツタに覆われた窓越しに見える庭の景色です。
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ツタに覆われた窓を外側から見るとこのような感じです。
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リビングの隣にはダイニングがあり、両者は連続した空間となっています。シェード付きのペンダントライトに照らし出されたテーブル面が美しく光り、そこから室内へ光が拡がります。
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2階へ上がると、そこはセカンドリビングのともいえる場所で、テーブル・ソファー・暖炉が設えられた心地よい空間です。実際アアルトこの暖炉の前で朝食を取ったりもしていたようです。
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このアアルト自邸は実に良い雰囲気でした。自邸だけあって、建築・インテリア・エクステリア全てに渡り、アアルト自身が心地よいと思う世界が体現されているように感じました。
なかなか去り難い思いで庭周りもじっくりと見学しました。
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さて次は海の方へ徒歩30分程度。橋で島に渡り、セウラサーリ野外博物館へ到着しました。

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ここにはフィンランド各地から集められた古い倉庫・住宅・教会などが多数展示されています。
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美しいデザインの倉庫です。
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こちらは住宅。スウェーデンで見たのと同じく、フィンランドでも赤茶色の外壁が伝統的です。
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簡素な中に静けさと美しさのある室内です。
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大きなかまどです。家の中にまたもうひとつ家があるかのような形です。大なり小なり、こういった佇まいのかまどが多く見られました。当時のかまどは台所であり、暖炉であり、家族が常にその回りで過ごす、まさに家の中心だったという感じです。
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ある作家の小屋です。
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丸太を加工した雨樋。昨日見たマイレア邸のディテールは、このような伝統的な建物の工法を参照したものなのだろうと思います。
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鎧戸にハート形の小窓が。かわいらしいです。
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こちらは教会です。
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船底天井の内部空間。光がやわらかく廻り込みます。
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セウラサーリ野外博物館、閉館時間までの1時間ほどで駆け足で廻りましたが、非常に見ごたえがありました。

さて、ヘルシンキ中央駅まで戻り、本日最後に訪れたのはヘルシンキ現代美術館(キアズマ)です。
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入るとこの吹抜け空間に。写真で見ていた印象通り、美しい空間でした。
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徹底的に水平の流れを強調したデザイン、プロポーション。鮮やかです。
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右側の壁面は垂直ではなく、断面的にもカーブしていて、向こうへ行くにつれその傾きが徐々に変わっていきます。包みこまれるようなやわらかさを感じます。
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スロープを上がり振り返るとこのような感じです。

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展示室は各階ともこの吹抜けの両側に展開しており、展示を順に廻っていく途中で幾度もこの吹抜けに出て、いろいろな高さ、方向からこの空間を見ることになります。多様な空間体験ができる豊かさ。そして、このような大きなミュージアムにおいて自分のいる位置を度々把握できることは、来場者のストレスを緩和する上でとても重要なことです。
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壁面は打ち放しコンクリートにうっすら白色塗装。アアルトが頻繁に用いていた、レンガ積みの上にうっすら白色塗装する素材感を彷彿とさせます。
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ラウンジやミュージアムショップは街に開かれた心地よいスペース。伝統的な街並みと現代建築との自然な融合を感じました。
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これで本日の建築探訪は終了。明日はいよいよ最終日です。


新井崇文
新井アトリエ一級建築士事務所


by takatakataka03 | 2015-06-30 05:59 | 北欧視察 2015

北欧の暮らしと住まいを訪ねて-09a

今日はヘルシンキ市内を5箇所見て回る予定です。まず向かったのはフィンランディアホール(アルヴァ・アアルト設計)。ヘルシンキの中央駅のすぐ裏手にあります。

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中に入り、広いホワイエを進むと、その先には外へ面したラウンジがあります。
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ホワイエ広く、比較的同じような空間が続きますが、階段廻りはおっ、と目を引く美しいシーンがありました。
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手すりのディテール。鋼材とラバーの組み合わせで、上質感があります。
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照明器具もアアルトのデザイン。美しいです。
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このフィンランディアホールでシベリウスの曲のコンサートなど是非聴きたいところでしたが、あいにく夏はバカンスのシーズンで、残念ながら公演はあまりないようでした。フィンランドの人々の多くは、夏は森へ出かけて過ごすのでしょう・・。


次はトラムに揺られること約20分。緑の豊かな住宅街で下車します。

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そこから徒歩10分程度でスタジオ・アアルトに到着。
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アアルトは1936年に事務所併設の自邸を建てそこで活動していましたが、晩年は手狭になったことから近くに新たな事務所を建てました。それがこの、スタジオ・アアルトです。エントランスを入ると、階段上方からの光に誘われます。
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2階の製図室は明るくおおらかな勾配天井の空間です。
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高窓の面台はほこりが溜まりにくいように斜めにする配慮が。アアルトの設計した他の建物でも見られるディテールです。

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打ち合わせ室にはプレゼンテーションのための壁面が。傾いた壁面に、上方トップライトからの光が降り注ぎます。徹底した作り込みが素晴らしいです。
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同じ2階にあるアアルトのアトリエは最も天井の高い空間。奥に向けて上昇する天井、その先から入ってくる光、中庭側で弧を描く壁面、様々な要素がくみあわさった、芸術的な空間です。

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1階には食堂があります。台形の平面形状をしており、やさしく、落ち着く空間です。布地の間接照明が温かみある雰囲気を出しています。

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食堂から通路を振り返ると、その先から廻り込む光が美しい。左手のレンガ壁の角のディテールも味わいがあります。
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この建物はコの字型平面をしており、中庭を囲いこんでいます。中庭はすり鉢状の地形で、シアターのように使える形状になっています。
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スタジオ・アアルト、どの空間にも明解な見所があり、実に良くできた建築だと思いました。この後、引き続きアアルト自邸へ向かいます。


新井崇文
新井アトリエ一級建築士事務所


by takatakataka03 | 2015-06-30 04:59 | 北欧視察 2015

北欧の暮らしと住まいを訪ねて-08

セイナッツァロの役場のゲストルームで目覚めた朝。部屋で朝食をとっていると、窓の外の中庭をリスが走り過ぎて行くのが見えました。

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さて、部屋の実測スケッチをすませると、今日も車で出発です。西方約300km、海沿いの街ポリ近郊のノールマルクへ向かいます。
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約束の12時ちょうど5分前、マイレア邸(アルヴァ・アアルト設計、1938年完成)に到着しました。
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この家は施主であるアームストローム社一族の方が現在でも時折滞在して使っているそうです。内部にはピカソを始め美術品が多々設えられており、日時限定ガイドツアーでの見学(2階はプライベート空間のため、1階のみの見学)となります。内部の写真撮影は事前の許可が必要とのことで今回は叶いませんでしたが、空間を五感で目一杯感じ取りました。
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内部は期待を裏切らない素晴らしさでした。種類としては豪邸というか、1階は社交空間としてのサロンのような空間です。天井は3mを優に超える高さで、空間も伸びやかで広い。その広い空間に形・素材・光などによる様々な変化がつけられ、美術品・家具・調度品などが散りばめられている。どこを見ても品が良く、美しく、絵になる。そんな空間です。
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アプローチの反対側に回り込むと庭にプールとサウナがあり、サウナと主屋を結ぶように屋根付きの半外部空間が展開しています。
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ここで食事をとることもあるのだそう。夏を楽しむには心地よい空間です。
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この半外部空間にハンモックのように上から吊られたデイベッドがあります。腰掛けてみると、ゆらーりゆらりとベッドが揺れて、想像以上の心地よさ。これは、実にいいです。

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この半外部空間の屋根は草屋根で、雨樋は丸太をくり抜いたもの。石垣の上にも草が生えています。素朴でよい風合いです。

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このマイレア邸、建築と植物の融合したデザインが随所で見られ、それが空間の潤いと居心地の良さにつながっているように思いました。

さて、マイレア邸を後にして、車を数分走らせたところに、美しい建物がありました。何だろうかと思い、中から出てきた人に訪ねてみると、マイレア邸を管理しているアームストローム社の本社屋とのことでした。
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このエリアにはその他にも美しい建物が多く、ちょっと歩くだけでも美しい景観を楽しめます。
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さて、ここから南東方向へ約300kmのヘルシンキへカーナビゲーションをセットし、出発です。フィンランドでは道端に花が咲いている箇所が非常に多く、美しい景色の中を進みます。
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もうひとつ特徴的な風景を。フィンランドは岩盤の上に乗っている国のようで、こういった切り通しの道ではコンクリートの擁壁をまず見かけません。岩肌そのものが擁壁代りです。
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幹線道路やハイウェイにはABCというドライブインが多々あります。日本でいえば、サービスエリアや道の駅といった感じです。私も幾度も立ち寄り、トイレ、飲み物、ガソリン、仮眠と様々に利用しました。
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ヘルシンキに近づくと天気は荒れて、土砂降りの雨になりました。到着したのは夜。2日間で1000km弱のドライブはハードでしたが、電車からでは見られない村や田園、湖沼の風景の只中を走ることができ、よい体験になりました。
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明日はヘルシンキのアアルト自邸を訪ねます。



新井崇文
新井アトリエ一級建築士事務所



by takatakataka03 | 2015-06-29 10:30 | 北欧視察 2015

北欧の暮らしと住まいを訪ねて-07

今日から1泊2日でヘルシンキを離れ、遠出をします。朝4時起きで身支度し、レンタカーを借りて一路北へ。

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目指すはヘルシンキの北方約300kmに位置するユヴァスキュラ近くの街、セイナッツァロです。到着したのはちょうど昼頃。早速、セイナッツァロの役場(アアルト設計)を見学します。

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手前に見える2階建の部分は図書館になっています。2階は天井が高く、縦ルーバー越しに外の松林へ視線が抜ける心地よい空間です。

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図書館部分の奥にはコの字形平面の建物があり、中庭を囲い込んでいます。
中庭は土が盛られて2階レベルとなっており、階段を上がると中庭に出ます。

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建物の反対側には芝の階段があり、こちらから中庭に上がることもできます。

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コの字形平面の2階は町役場部分です。入るとまず、緑ごしの光が美しい空間に迎え入れられます。

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右手を見ると、レンガ壁の入隅にアールトデザインのフロアランプによる光溜まりがよい雰囲気。左手には中庭からの光が回廊越しにやってきてそちらへ誘われます。

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回廊は中庭に面した明るく心地よい場所。床・壁とも異なる素材の組み合わせで小気味良く分節されており、温かみのある雰囲気です。

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外から見た回廊はこのような感じです。

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入り口に戻り、階段を上がると議場に出ます。階段部分は高窓が心地よい雰囲気です。

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さて、そこから湖岸を車で10分程度走らせ、次に訪れたのはアアルト夏の家(アアルト設計、1954年完成)です。

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この家はアアルトが自身の夏の別荘として作ったもの。ムーラッツァロという島にあり、今は橋で渡ることができますが、当時は橋がなく、ボートで渡ったそうです。湖から上がり建物へアプローチすると、まず中庭に出ます。

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この中庭、写真で見て想像していたよりも、実際訪れてみると、柔らかい雰囲気で、実に良い感じなのです。

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これはなぜなのだろう、私は中庭を歩き回りながら考えました。そして思い当たったのは、これはまさにインテリアの手法の外部への応用なのではないかということです。例えば、心地よい部屋のインテリアを設えようとした時、床にはコーナーごとにラグを敷き、壁には絵やテキスタイルを飾り、床面、壁面が単調にならないよう分節していきますよね。この中庭は床・壁合わせて50種類ほどの様々な色・形・パターンのレンガの組み合わせで構成されています。これらがまるで、室内でラグや絵やテキスタイルを配するのと同様の効果を挙げているように思えるのです。

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ある程度の大きさをもつこの中庭の空間は、床・壁ともそれらのパッチワークにより細分化され、なんとも柔らかな雰囲気を出しているというわけです。加えて壁面を覆うツタ。これも柔らかい雰囲気を出すのに効いています。

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そしてもうひとつの要素として、中庭から湖を振り返った風景があります。ピクチュアウィンドウのように切り取られた風景の中には、柔らかな緑の落葉樹と、その先には穏やかな湖水を湛えるパイヤンネ湖があります。この風景が、これまた実物を見ると写真の印象よりもずっと柔らかい雰囲気なのです。

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冬の長いフィンランド。待ちに待った夏を楽しむためのサマーハウスのメインの空間として、この中庭は実に素晴らしいと感じました。

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内部空間はL字形平面となっています。リビングからは中庭越しにパイヤンネ湖への眺望を楽しむことができます。

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ダイニングは窓から遠く、比較的守られた雰囲気です。もう少し光を入れても良かったのでは、と個人的には思いましたが、これは内部を囲い込むほど中庭の開放感がより一層引き立つというねらいなのではないか、と解釈しました。

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見学を終えて再びセイナッツァロの役場に戻り、今夜は中庭に面するゲストルームに宿泊です。

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ツタの覆う窓越しに緑の光が入り込む、素敵な部屋。近くのスーパーで食材を買い、備え付けのキッチンツールで調理して部屋のテーブルで食事をしました。窓の外を見ると、そこは閑静な中庭。窓の外にもまたもうひとつの部屋があるかのようで、この落ち着き感は、ちょっと体験したことのないような種類のものでした。

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ここで朝までぐっすりと良く眠れたのは言うまでもありません。

明日は西へ向かいます。



新井崇文
新井アトリエ一級建築士事務所


by takatakataka03 | 2015-06-28 17:56 | 北欧視察 2015

北欧の暮らしと住まいを訪ねて-06

この日は午前、午後でそれぞれひとつずつの建築を巡ります。まずはヘルシンキ中央駅からバスに揺られること約30分、森の中の住宅街で下車しました。
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歩くこと数分でグッド・シェパード教会(ユハ・レイヴィスカ設計)に到着です。
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教会に足を踏み入れると、低く抑えられた天井の向こうに広がりある空間が見えてきます。
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さらに歩を進めると、このシーン。その圧倒的な美しさに、心洗われる思いがします。
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徹底的に線と面で構成されたシャープなデザイン、その形状に表情を与える光のドラマ。
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所々に色のついた光が見えます。
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色ガラス越しの光かと思い、裏に廻って見てみると、壁の一部に色のついた面があり、その色が反射しているという仕組みでした。
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祭壇から振り返ると、2階席にかけてペンダントライトが上昇して行く光景が見えます。
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このペンダントライトの美しさが空間の魅力を決定づけているように思います。まるで沢山の魂がここそこに漂い、我々を守り、祝福してくれているかのような、そんな温かい気持ちにさせてくれる光景です。
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ペンダントライトは一見ランダムな配置に見えますが、よく見てみると3つセットになり、それぞれ「高・中・低」という高さの差がつけられています。天井を見上げるとライティングレールに沿って合理的に配置にされていることが分かります。
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見学していると、ちょうど日曜のミサが始まり、パイプオルガンの演奏が響き渡りました。昨日のテンペリアウキオ教会でもそうでしたが、空間と音楽を併せて味わえるのは、非常に印象深いことです。
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ミサの後、近くに座っていた老紳士からティータイムに誘われたのでご相伴に預かり、その後教会を出てバス亭に戻ると、バスが来るまでまだ時間がありましたので、少しだけ森に入ってみました。こんな森の中にある住宅地で暮らすという環境の良さと、教会でお話した人々の穏やかな人柄とが、頭の中で重なりました。
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さて、一旦ヘルシンキ中央駅に戻り、今度は近郊列車にて約30分で湖畔の街、ヤーヴェンパー駅に下車します。
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そこから約30分歩きます。道端の花が美しく、のどかな場所です。
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コッコネン邸(アアルト設計、1969年完成)に到着しました。
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コッコネンは作曲家であり、アアルトに自邸の設計を依頼しました。庇の特徴的な形態はピアノのモチーフからきているものだそうです。
この湖畔はシベリウスを始めフィンランドの作曲家が多く居を構えた場所です。コッコネン邸の庭にはサウナ小屋とプールがあり、その先にはトゥースラ湖が見えるシチュエーションとなっています。
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この家ではコッコネンが亡くなった後、公募により選ばれた2人の音楽家夫妻が住み込み、曜日・時間指定のガイドツアーで見学者を案内しています。アアルト設計のすばらしさをコンセプトからディテールに熱心に説明してくれ、この住宅のメインである音楽をスタジオルームではテノールの歌声とピアノのアンサンブルによるフィンランディア曲(シベリウス作曲、作品26ー7)を披露してくれました。内部は撮影不可でしたが、木質感あふれる、明るく、温かみのある空間で、世代を超えて人々に愛され、受け継がれるであろう空間のおおらかさを感じました。
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これで本日の建築探訪は終了。明日はヘルシンキを離れ、北へと向かいます。

新井崇文
新井アトリエ一級建築士事務所



by takatakataka03 | 2015-06-26 13:43 | 北欧視察 2015

北欧の暮らしと住まいを訪ねて-05

昨晩からヘルシンキで泊まっているのは、キッチン付きのアパートメントホテルです。
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北欧は物価が高く(何を買うにも日本の2倍くらいの値段という印象です)毎回外食すると出費がかさむこと、朝から晩まで建築見学して廻ると遅くなり、疲れるので、そこからさらに気を張って外食するより、部屋で自炊して食べたほうがリラックスできるという考えです
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自炊といっても、旅先ですので簡単に。日本から持参した米とライスクッカー(小鍋)でごはんを炊き、インスタント味噌汁orスープをつくる。あとは現地のスーパーで買った生野菜をスライスして魚の缶詰と合わせて。あとはフルーツ。あまり自慢できたものではありませんが、そんな感じです。
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さて、この日はちょうど夏至祭の日のためクローズしている建物も多く、見学先は限られました。まずはヘルシンキ大聖堂(カルル・エンゲル設計、1852年完成)を見学。
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次はテンペリアウキオ教会(ティモ&トゥオモ・スオマライネン兄弟設計、1969年完成)を見学。
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天井高の抑えられたエントランスを進むと、岩盤をくり抜いて屋根をかけた大空間に出ます。
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周囲から降りそそぐ光により照らし出された岩壁が、圧倒的な存在感を放っており、それらに囲われた落ち着き感があります。
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対してガラス屋根の構造は非常に繊細で、細かく砕かれた光を室内に導き入れています。この組み合わせが絶妙で、美しい。
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ちょうどピアノの演奏が行われていました。先日ストックホルムの森の葬祭場にある礼拝堂でもパイプオルガンの演奏を偶然聞くことができまいしたが、空間を見学する際に音楽が共にあると、その印象もぐっと深みが増します。
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岩に囲われた空間には、神聖な雰囲気が漂います。以前訪れた沖縄で、「御嶽(うたき)」と呼ばれる聖なる場所がありましたが、これも岩に囲われた場所でした。
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一部に2階席もあります。2階席のヴォリュームは周囲の岩壁から切り離されたシャープな形態。この対比が鮮やかです。
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この教会はデザインのコンセプトが非常に明快かつ効果的で、見学していて納得することしきりでした。この建物はきっと時代を超えて、仮に用途が変わることがあったとしても、末長く人々に愛され使われ続けるであろうと感じました。
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さて本日のメインの見学を終えたあとは、水着を持って、フィンランド式サウナも体験できるというウルヨンカツの公共プールへ。しかし残念ながら夏期休業中でした。
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その後はエスプラナーディ公園へ。さすがヘルシンキの目抜き通りだけあって、美しい歴史的建造物が建ち並び、都市の風格を感じます。これこそが都市の財産であるという印象を受けました。
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夏の太陽を享受する人々。ヘルシンキは曇りや雨が多く、夏でも陽射しが出ている時間は半分もないのではという感じがします。それだけに、人々が太陽を恋い焦がれる気持ちもわかる気がします。
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通りでチェロを奏でる光景も。
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エスプラナーディ公園を抜けるとマーケット広場、そして港です。
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広場の先にはウスペンスキー寺院と、その手前にはアアルト設計のオフィスビルが見えます。
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これで本日の見学は終了。アパートメントホテルに戻り、部屋でシベリウスの交響曲を流しながら、たまった洗濯を行いました。因みにシベリウスはこのフィンランドを代表する作曲家です。ドラマチックな展開でわかりやすい交響曲第1番、第2番は日本でもよく聴いていましたが、フィンランドに来て森の風景を見たり、冷涼な気候の中で過ごしたりしていると、今まで地味に思えてあまり聴いていなかった第3番や第6番という曲が、妙にしっくりと体に入ってきて、いいものだと感じるようになりました。
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明日はヘルシンキ近郊の建築を巡ります。



新井崇文
新井アトリエ一級建築士事務所





by takatakataka03 | 2015-06-26 10:01 | 北欧視察 2015

北欧の暮らしと住まいを訪ねて-04

昨日16時45分にストックホルムを出港したシリヤシンフォニー号です。小雨の降る中、スウェーデンの群島を縫うように進んでいましたが、一晩明けて、東の空にはようやく晴れ間が見えてきました。気温は10度前後。甲板では服を着込まないと寒いです。
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朝食はビュッフェにて。各自好きな食べ物をとって好きな席にすわるバイキングスタイルです。
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食後のコーヒーを飲んでいると、窓の外にヘルシンキの群島が見え始めました。
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甲板へ出ると、そこはもうヘルシンキの港の風景です。高さの揃った建築物ぐんの中で一際高くそびえたつ、ヘルシンキ大聖堂が見えてきました。歴史ある街の佇まいに迎え入れられるように船が湾の中へ進んで行き、自然と気分も高揚してきます。シベリウスの交響曲第2番の1楽章が頭の中で繰り返し流れていました。
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港からはトラムに乗って、ヘルシンキ中央駅へ。エリエル・サーリネンの設計による駅舎です。光がじんわりと入ってきて、各部の装飾を美しく照らし出します。
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特に素敵だったのはガラス廻りのディテール。繊細なステンドグラスです。
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プラットフォームに出ると、こちらは一転して現代的なガラス屋根。爽快な空間です。ガラス廻りのディテールの繊細さは、先程見た駅舎とも共通する雰囲気があるように感じました。
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ヘルシンキ13時12分発。インターシティ(特急列車)に乗って、ロシア国境近くの街、イマトラを目指します。窓の外を見ると、マツとシラカバの織りなす森林の風景がひたすら続きます。
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15時43分、イマトラの駅に到着しました。ヘルシンキの東北方向約300kmに位置します。
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ここからアアルト設計の教会へ向かうのですが、折悪しくこの日は夏至祭イブの祝日にあたり、駅の事務室は休業、構内の店舗からタクシー事務所まで全て閉まっていて、人っ子一人いません。市街地は離れているようで、駅前は他に店もなく閑散としています。バスも休業しているようです。ここで降りた乗客たちも皆迎えの車などに乗ってすぐにいなくなってしまいました。目指す教会までは5kmほどあり、本当はここで誰かにきいてバスに乗り込む算段だったのですが、とてもそんな状況ではありません。これはまずいと、だんだん不安になっていたところ、駅のロータリーに1人青年が幼い娘さんを連れて迎えを待っているのを見つけました。藁にもすがる思いで話しかけたところ、ちょうどこのイマトラの街に帰省したところで、おじいちゃんが車で迎えに来るのを待っているところだといいます。私の行き先を話したところ、方向が同じだから載せていくと言ってくれました。旅先での人情ほど有難いものはありません!

無事、ヴォクセンニスカの教会に到着しました。アアルトの設計により1958年に完成した建物です。
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教会にはひと気がありませんでしたが、通りがかった管理人(隣に管理人宿舎があり、住み込んでいるのではないかと思われます)に頼んで、中に入れてもらいました。
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教会内部は地域の集会場を兼ねているため、3分割して使用できるつくりになっており、それに応じて空間形状も3つの膨らみにより分節されています。ちょうどそれが心地よい空間サイズや光の変化をもたらしていて、絶妙な設計です。
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空間をやさしく包み込むかのように内へ傾いたハイサイドライト(高窓)からは、静かな光が降り注ぎます。
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長手方向の壁は、片側は直線、もう片側は曲線的に3つのふくらみをもつ形状となっています。壁や天井がどこも心地よいサイズに分節されており、とても優しい印象です。
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外側から見るとこのような感じです。
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刻々と変化する光のもと、静まりかえった空間の中で2時間あまりを過ごしました。静けさがあり、それでいて温かみも感じる。各部形状の創意工夫、光の扱い、どれも素晴らしく、圧倒される思いがしました。
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さすがに、アアルトの教会建築の最高峰とも言われているだけのことはあります。遠くまで足を運んだ甲斐がありました。

その後、管理人さんにタクシーを呼んでもらってイマトラの駅まで戻り、20時15分発、ヘルシンキ行きの列車に乗りました。森と田園風景の向こうで、ゆっくりと日が暮れていきます。
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22時48分、ヘルシンキ中央駅へ到着。さすがに今日は疲れました。

明日はヘルシンキ市内を探訪の予定です。


新井崇文
新井アトリエ一級建築士事務所



by takatakataka03 | 2015-06-20 03:45 | 北欧視察 2015

北欧の暮らしと住まいを訪ねて-03

昨晩泊まったのは、ストックホルム中央駅からほど近い住宅地のお宅で、緑豊かな環境の集合住宅です。airbnbというHPのサイトで予約しました。一般の家庭にステイさせていただくことで、暮らしの雰囲気がわかり、とても良かったです。ホストの方はとても親切で、交通機関のことなども丁寧に教えてくれました。泊まった部屋もなかなか素敵でした。
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朝食は、前の日にアスプルンドの夏の別荘でいただいたのと同じく、セルフでつくるオープンサンド。加えて、スクランブルエッグも用意してくれました。
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さて身支度をすませると、まずはガムラスタン(旧市街)へ。緩やかにカーブする通りの先には教会の尖塔がそびえ立ち、足元は石畳が雨を受けてしっとりと輝いています。中世の面影の残る街です。
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もし仮にこの石畳がアスファルトだっととすると、全く雰囲気は異なるでしょう。素材のもつ圧倒的な力というものを感じました。
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ちなみに建物の屋根に降った雨水を落とす竪樋の放流先はこのようなディテールに。歩道に雨水が広がらない配慮がされています。
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このガムラスタンは端から端まで歩いてもおよそ600〜700m程度の小さな島です。宮崎駿監督の映画「魔女の宅急便」のモデルとなった街のひとつといわれていますが、実に美しく、雰囲気がいい街並みです。
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幅90cm程度の細い通りもあります。都市だけど、室内のような、親密な雰囲気の空間です。
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さてガムラスタンを通り抜け、船で向かいの島へ渡り、今日の目的地、スカンセンへ到着しました。スウェーデンじゅうから伝統的な建物を集めた野外博物館です。
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赤茶色に塗られた木の外壁が多く見られます。芝屋根の建物もあります。
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玄関廻りのちょっとした細部に温かみが感じられます。時代と共に建物のスタイルは変わりますが、住む人が家に愛着をもてるような要素というものは大切ですね。
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おそらく家畜を囲う用途と思われますが、スウェーデンの伝統的な形状の柵です。アスプルンドも夏の別荘で、この伝統的なディテールを参照した柵を作っていました。
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赤茶色と白色のコントラストが美しい外壁と、素朴な藁葺き屋根。人々が長い時間をかけて形成してきた伝統的なデザインには、世代を越えて共有できる美しさがあると感じました。
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昔の建物なので窓は小さく、室内は基本的に薄暗いですが、ほのかな明かりに照らし出された窓辺の風景には素朴な美しさがあり、見ていると穏やかな気持ちになります。
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広い園内を概ね見て回るのに2時間以上はかかりました。帰りは再び船でガムラスタンへ向かいます。
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ゆるやかにカーブする通り。歩を進めるにつれて徐々に見えてくる建物のファサード。建物も、色や素材に調和はありつつも、それぞれが少しずつ異なっている。そういった要素がこれら旧市街の風景の魅力を形成しているのだろうか、そんなことを思いながら歩きました。
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午後はステイ先のお宅に戻り、スーツケースを持って港へ。フィンランドへ向かう大型船に乗り込みます。船内で一泊し、明日の朝にはヘルシンキへ着く予定です。


新井崇文
新井アトリエ一級建築士事務所

by takatakataka03 | 2015-06-19 21:25 | 北欧視察 2015

北欧の暮らしと住まいを訪ねて-02

翌朝、アスプルンドの夏の別荘にて。宿泊したゲストハウスから外に出ると、空は気持ちよく晴れ渡っていました。
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キッチンにて朝食をいただきました。セルフで各自好きなようにオープンサンドをつくります。チーズ スライサーが使いやすく、見た目もかわいくて気に入りました。
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これは日本の文字でしょ?何という意味なの?ときかれたのはヨーグルトのパッケージ。こんなところに日本の漢字が使われているのには驚きです。
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朝食をすませると、建物を隅々まで見学し、写真を撮ったり、宿泊したゲストハウスルームの実測をしたりして過ごしました。

リビングルームには非常に特徴的で美しい形をした暖炉がありますが、暖炉にしてはとても大きい。これって火を焚いていない時には中に入れるのでは?と思い、椅子を持ち込んで中に座ってみるとやはり!非常に居心地のよいスペースです。小さな茶室にいるような、落ち着きがあります。こんなスペースをリビングに設けることができれば、などと発想を膨らませました。
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リビングの窓辺にはテーブルとソファーチェアのセット。ソファーチェアのリラックス感にあうよう、テーブルの高さは60cmに抑えられています。ソファーチェアに座ってみると、背もたれが高く肩まで包み込まれるかたちで、想像以上の心地よさです。この家具もアスプルンドのデザインによるものです。
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窓から入江を望む眺め。左手に大きな木があり、ちょうど風景に程良く障る感じになって絵画的な遠近感、奥行き感を出しています。きっとアスプルンドが考え抜いた上での樹木配置なのでしょう。
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キッチンには日常使いのダイニングテーブルがありますが、こちらはそれとは別のメインダイニング。この窓からはも入江の景色を楽しむことができます。テーブルの上のペンダントライトがテーブルの中央からあえてずらされています。こんな柔軟な発想もありなのかと感心しました。
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キッチンは近年リフォームをしたとのこと。日本人は和食、中華、イタリアン、その他ありとあらゆるスタイルの料理にチャレンジするためキッチンに差多くの道具や食材が溢れがちですが、ヨーロッパの人はもっとシンプルなのでしょう。程々の収納量できれいにまとまっています。
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この家は築80年になりますが、愛され、そしてよく手入れされて今も使われています。長持ちする家とは、世代を越えて愛され続ける魅力をもつ家なのだと改めて感じました。

さて正午になり、シャルロッタさん一家に別れを告げて、再びストックホルムホルム中心部へ車を走らせました。訪れたのは森の葬祭場。アスプルンドとレーベンツという2人の建築家ののデザインによるもので、現在では世界遺産にも登録されています。
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広大な森林の中に10万もの墓が並ぶ市民墓地。死者は森へ還る、というスウェーデンの死生観が取り入れられているとのことです。墓地なのにさりげない雰囲気で、人はいつか死ぬ、それは特別なことではないんだ、というようなことを思わせられました。墓地のあり方としてとても自然だと思いました。
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敷地内には5カ所の礼拝堂があります。これはそのうちのひとつの待合室。すっきりとしたモダンデザインでありながら、ベンチや壁・天井取り合い部の曲面形状、その他ちょっとしたディテールに一手間かけたこだわりがあり、それを目にした人々の気持ちにやさしく語りかけるデザインが、そこにありました。
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同じ建物内にある礼拝堂の中も見学しました。葬儀の直後だったため撮影は許されませんでしたが、その空間に身をおいた時の感動は表現が容易ではありません。馬蹄形の平面形状に沿って設けられた外周の通路には無数のろうそくが配され、薄暗い中、ゆらめく点の集合が弧を描いています。私のよく知っている、バーバー作曲の弦楽のためのアダージョという曲が、パイプオルガンで奏でられ、響き渡っています。厳かでありながら、穏やかさの漂う空間・時間。

礼拝堂は森の中の3箇所に点在しています。いつか自分も死んだらここに来る、そう思うだけで安らかな気持ちになれるような、ちょっと大げさかもしれませんが、これはそんな存在の建築だと思いました。それは人々にとって素晴らしいことなのではないでしょうか。
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さて森の葬祭場を後にして、いったん空港でレンタカーを返したあと、電車でストックホルム中央駅へ。
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次はストックホルム市立図書館を訪れました。これもアスプルンドの設計による建物です。
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中に入ると、そこは巨大な円筒形の図書室で、周囲はぐるっと360度、3層の書架に囲まれています。これは凄い!人類の叡智の中枢に放り込まれたような感覚とでもいいましょうか、そんな感動がありました。
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周囲には比較的小さな図書室が3方に配されています。森の葬祭場の待合室でも見かけた、壁・天井取り合い部の曲面形状が光だまりとなり、やさしく美しい表情をみせています。
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夜9時の閉館とともに本日の建物見学も終了。朝から晩までかけて、3つのアスプルンド作品を巡りました。明日はスウェーデンの伝統的な建物を訪れます。


新井崇文
新井アトリエ一級建築士事務所



by takatakataka03 | 2015-06-19 20:35 | 北欧視察 2015


「光」「風」「緑」といった自然の恵みを活かした住まいを設計しております。ご連絡はこちらまで→info@arai-atelier.com


by takatakataka03

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